力匠部屋
犯人の家を特定!
- [2013/02/28]
- あたいとウェンディ君は犯人の自宅へと一目散に向かった。4つ目の路地を右に曲がったところが犯人の二階堂邸だったはず。あたいたちが忍び足を立てて近づいていくと、路地を曲がった5件目に大きなガレージ付きの家があった。どうやらあたいたちと同類の番犬はいないようだ。あたいはほっと胸を撫で下ろした。
《ここだな。二階堂って表札が出てる》
ウェンディ君が表札を指差した。
《車が停めてあるわね》
あたいは兄貴を轢いた車を発見する。
大きくてどっしりとした黒のワンボックスカー。
兄貴の身体から発せられた汗臭い匂い。
ビール臭いボディとバンパー。
あたいとウェンディ君が手分けして車の匂いを嗅ぎまくった。
間違いない。完全に一致している。
《これで物的証拠は全て揃ったな。ノンちゃんの目撃情報もある》
《あとは犯人をどうやって逮捕するかね》
数分経ってから甲高い自転車のブレーキ音が鳴った。おそらくあの犯人の男が自宅へ帰ってきたのだろう。あたいとウェンディ君は車体の下へ潜り込み、タイヤの影に隠れて男の様子をうかがった。何事もなかったかのように男は玄関から家の中へ入っていく。そこへようやく遅れてゴールデンレトリバーのゴンが到着した。
《ゴン、こっちこっち》
ウェンディ君が手招きをして、タイヤと車体の隙間からゴンに呼び掛けた。行ったり来たりのゴン。疲れ果てて大の字になって道路に寝そべっている。
《見つかっちゃうわよゴン。早く隠れて》
あたいはウェンディ君の背中からひょっこり顔を出しながら言った。ゴンが見つかることで、あたいたちの身にも危険が及ぶことを心配した。
そんなのお構いなしのゴンは仰向けのまま腹を出し、肩で息をしていた。まるでボクサーが強烈なパンチを受けたノックアウトシーンみたいだった。
《大丈夫かゴン》
ウェンディ君がゴンの元へ駆け寄って心臓に耳を傾けた。尋常ではない速さは、工事現場のドリルより激しく上下しているかのようだった。
《生きてた?》
あたいもゴンの元へ駆け寄っていき、我慢しながら目を閉じてゴンの額の汗と鼻を舐めてあげた。優しい心を持つ乙女の気持ちを自分なりに演出。ウェンディ君に猛アピール。
《生きてた? じゃねえよ。年寄りをこき使いやがって》
《犯人はどこへ行ってたんだ?》
ゴンのことは気にもせず、ウェンディ君がそう聞くと、ようやく正気を取り戻したゴンが切り出した。
《事故現場だよ。しかもやつはものすごく青ざめた顔をしてたぞ。よほど轢き逃げした後が気になってたんだろうな》
ウェンディ君がうなづきながら言った。
《あの男が真犯人だ。放火魔と轢き逃げ犯は、また現場に戻ってくるというからね。犯罪者の心理とプロファイリング。いまごろ奴は自分の部屋でびくびくしているはずだ》
ウェンディ君は右手を顎の下へ持っていきながら断言した。決めのポーズ。
それを見たあたいは、ウェンディ君の格好よさにうっとり。ハートマークが目の前に散らついているのがわかる。初めて彼と出会った時もこうだった。
【続く】
名前:T.Y
【趣味】競馬、野球、B級グルメ店開拓
【好きな馬】ジェニュイン(待受画面にしてます)
【好きな物】ビール、ビール、ビール
【好きなロッカー】浜田省吾
【好きな歌】浜省の「I am a father」(私自身父親ではない)
【マイブーム】ウコンのサプリメント摂取