力匠部屋
あたいって頭いい!
- [2012/11/15]
- 犯人の足取りは中学校の外周を道なりに移動している。突き当たりのT字路を左折。そのまま真直ぐ林の中を通り抜けていた。大きい道路に合流したところで右折。大きな公園が左手に見えたところで車を停車させたようだった。犯人の匂いが強く残っているのがわかる。
目の前には住宅街が広がっている。あたいとウェンディ君は庭で放し飼いにされている犬を見た。犬小屋には『ヘラクレス』のプレートが掲げられている。いかにも恐そうな名前の黒いドーベルマン。牙をむき出しにして涎を垂らしている。それでも怯まずウェンディ君が聞き込みをした。本当はあたいにとってデートしているカップルに見られたかった。
《左手全部の指にシルバーの指輪をはめた男知らないかな。黒いワンボックスカーに乗ってるんだけど》
ヘラクレスがニラミをきかして答える。
《あんたらは見かけない顔だね。それにタダで教えるわけにはいかないなあ》
ヘラクレスが情報料を求めてきた。彼も刑事もののドラマを見過ぎだ。あたいは背中からリュックを下ろし、ウェンディ君と一緒に口でくわえ、庭へ目掛けて放り投げた。あたいが話かける。
《リュックの中に砂肝が入ってるから。ほらねっ、匂いも音もするでしょ》
ヘラクレスは匂いを嗅ぎ、リュックの上からかじることで堅さを確かめている。
《いいだろう、教えてやる。4つ目の路地を右に曲がったところに二階堂っていう一軒家がある。そこの息子が黒のエルグランドに乗ってるよ》
そう言いながらもヘラクレスは、あたいたちに顔を向けず、リュックのパーツと格闘していた。どうしても外れない。
《その人は左手全部に指輪をしているの?》
あたいは、リュックの謎ときに躍起になっているヘラクレスにもう一度尋ねた。
《もちろん。さっきもの凄いスピードで前の道を通った時も指輪をしてたぞ》
あたいとウェンディ君は顔を見合わせた。二階堂という男が犯人に間違いない。
《砂肝あげちゃっていいの?》
ウェンディ君があたいに耳打ちしながら、二人でその場を去った。
《実はね、あの中には砂利が入ってるのよ。兄貴に悪戯されて入れられたのね。あたいって頭いいでしょ。男の子って単純なんだから》
あたいたちはヘラクレスが我慢しきれずに、リュックを噛み切ったのを目撃した。口の中が砂利だらけで唾を吐き出している姿が遠めからでもよくわかる。あたいとウェンディ君の笑いが止まらなかった。
《ちきしょう、騙しやがったな》
ヘラクレスが発した捨て台詞。
そこへふらついた足取りで追い掛けてきたゴンが、前を通りかかった。
ヘラクレスは憂さを晴らすために、リュックをくわえてゴンに投げ付けた。
《なにしやがんでえ》
体格ではひけをとらないゴン。威勢も気風もいい。
《てめえはあいつらとグルだな》
《知らねえよそんなの。悔しかったからこっちへきやがれ》
ゴンは、庭の囲いがあるのをいいことに啖呵を切った。ヘラクレスが外に出られるわけがない。
《あっあの人》
ウェンディ君が驚きながらあたいを見て言った。
《ノンちゃんどうしたの?》
《あの男が犯人じゃない》
あたいの目線の先には、自転車に乗った犯人を目撃した。
名前:T.Y
【趣味】競馬、野球、B級グルメ店開拓
【好きな馬】ジェニュイン(待受画面にしてます)
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